自宅で看取るということ

自宅で看取るということ 横須賀市議会議員 長谷川昇 

▼昨年7月、横須賀市は在宅死の割合が20万人以上の自治体の中で、全国1位(22.9%)という報道がされた。全国1位というのは聞こえが良いが、必ずしも在宅死の数が多いことは手放しで喜べる話でもない。実は、カウントされた中に施設や病院に入れずに待機している方や孤独死や自殺もカウントされる負の側面もあるからだ。

▼昨年8月、我が家では末期ガンの父を自宅で看取ることを決めた。余命数週間という中での選択。地域医療専門の主治医から「最期を迎えるのは病室、それとも自宅のどちらを望みますか」「延命治療はしますか。」と問われた。家や家族のために生きて来た父、ためらわずに「在宅で、延命はしない」ことを選んだ。とはいえ、家族全員が在宅看取りの初心者。担当医から最期を迎える心構えや末期ガンの患者の対応も丁寧に教えていただいた。

▼一方で、在宅の看取りは、家族の役割も多い。おむつの交換、投薬や痰の吸引、酸素ボンベの使い方も家族が順に教わった。心強かったのは「いつでも電話してください。夜中でも大丈夫です。」という医師と看護と地域包括支援センターの丁寧なケア体制があったこと。今思えば、質の高いネットワークが本市の在宅看取りを成立させていた。とりわけ、妻や姉妹達は医師や看護師さんに何度も不安や心配を払っていただいた。

▼そして、8月28日、父の最期を子4人と配偶者に孫10人で看取ることができた。孫達にとってもとても大切な学びの機会であったと思う。感謝しても感謝が足りないぐらいだ。

▼本市の在宅死全国一には、きちんとした理由がある。本市は国が進める地域包括ケアシステムをいち早く進め、医療・介護の垣根を越えた取り組みを進めてきたとりくみが背景にあるからだ。

▼父の死を通して、家族、子ども達も「命のしまい方」を体験する中で、命のこと、福祉のこと、医療のこと、さらに多くの学ばせていただいたように思う。「在宅の看取り」という仕組みはシステムではあるが、質の高いハートケアがあって初めて成立するものだ。

▼議員としてもこの在宅医療の意味を広め、丁寧に推し進めることを意見してきた。「看取るならよこすか」とは言わないが、全国のどこの自治体に於いても終末医療のあり方は注目されている。2025年問題を見据えた取り組みとして本市のとりくみは、さらに注目されるはずだ。

在宅療養ガイドブック「最期までおうちで暮らそう」 横須賀市在宅医療検討会議横須賀市ホームページからダウンロードできます。

https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/3120/zaitaku/documents/zaitakuryouyouguidebook2804.pdf

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