ピケティ「21世紀の資本」から、現代を読み解く

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「ピケティ」という名前を聞いたことがありますか。最近話題のフランス人経済学者です。今、彼の著書「21世紀の資本」という本が売れている。600ペーシを超える専門書で5940円という高価なものだが、すでに翻訳版も13万部の発行部数だという。 本の内容を噛み砕いた解説書も売れている。
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さて、「21世紀の資本」だが、 膨大なデータを用いて、資本主義社会における格差拡大の仕組みを説明しているさらに、格差是正のための政策を提案している。資本主義の21世紀の姿を、読み取ったものである。 この本は要約すると「資本主義は長期的にみると、資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きい。その結果、富の集中が起こるため、資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど、それだけ富は資本家へ蓄積される。」ということだ。
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そして、「富が公平に分配されないことによって、社会や経済が不安定となるということを主題としている。この格差を是正するために、累進課税の富裕税を、それも世界的に導入すること」を提案している。 世の中が格差が広がる一方でテロも頻繁に起こる不透明な時代を捉えるヒントがあるという。 私も今、ピケティを解読中です。700ページというとかなり厚い本。ただ、他の経済書のように数字がびっちりというものとは違う、世界中の経済の状況について、物語のようにきちんと表記されている。裏付けのデータを取りながら、きちんと文章でその原因やそこにおける状況分析について、緻密に描かれている。「今後経済学を学ぶ人は必ず必須の文書になるはず」とのコメントもある。ぜひじっくり読みたいですね。
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若者に富の再配分を ピケティ氏、   2月1日東京新聞  
来日中のパリ経済学校のトマ・ピケティ教授(43)は三十一日、本紙のインタビューに答え、「人口減少の進展に伴い日本の所得・資産格差が将来さらに深刻になる」と警告した。金融緩和などアベノミクスが問題を悪化させる懸念があると指摘し、「成長と格差是正を両立させるためには資産課税の強化により、資産を持たない若者などへの富の再配分が必要になる」と提言した。 (池尾伸一、吉田通夫)
ピケティ氏は格差問題を掘り下げた著書「21世紀の資本」が世界各国で注目を集めている。 ピケティ氏は独自に収集した各国の税務データを基に、「日本では上位10%の富裕層の所得の全体に占める割合が、一九六〇年代は30%程度にとどまっていたが、二〇一〇年には40%に上昇し、富の集中が進んでいる」と指摘。非正規労働の割合が四割に達していることにも「企業は彼らには十分に教育しないので新しい技能を得ることができず全体の経済成長を阻害する」と懸念を示した。 さらに、「人口減少が加速するため、日本の経済成長率は将来もっと鈍化する」と分析、「過去に蓄積された金融資産や土地などの重要性が増し、親から遺産を引き継ぎ、家賃や配当を稼げる富裕層と、所得が伸び悩む中低所得者層の不平等が広がる」と指摘した。 一方、金融緩和については「『がまんすればいずれ果実が全体に行き渡る』との理論は米国をみても実現しておらず、米国では過去十年で不平等は拡大した」と効果を疑問視した。 その上で、成長と格差是正を両立させる策として、富裕層の持つ土地や金融資産に、資産額が大きいほど税率が高くなる「累進資産課税」を導入することを提案、「財源を社会保障や公的な学校への支援に使うことにより資産を持たない若者世代の就職や子育てを容易にすることが有効になる」と指摘した 。 一方、政府が進める消費税の引き上げ政策については「消費税増税は若者や低所得者にも負担になる。富の蓄積をしていない世帯の負担は軽くする必要があり経済成長にとってもマイナスだ」として否定的な考えを鮮明にした。  
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「21世紀の資本」 トマ・ピケティ著(みすず書房 5,940円税込) 解説  ウィディペキア~
資本主義の特徴は、格差社会が起きることである。そして、富の不均衡は、干渉主義を取り入れることで、解決することができる。これが、本書の主題である[6]。資本主義を作り直さなければ、まさに庶民階級そのものが危うくなるだろう[6]。 議論の出発点となるのは、資本収益率(r)と経済成長率(g)の関係式である。rとは、利潤、配当金、利息、貸出料などのように、資本から入ってくる収入のことである。 そして、gは、給与所得などによって求められる。過去200年以上のデータを分析すると、資本収益率(r)は平均で年に5%程度であるが、経済成長率(g)は1%から2%の範囲で収まっていることが明らかになった[7]。 このことから、経済的不平等が増してゆく基本的な力は、r>gという不等式にまとめることができる。すなわち、資産によって得られる富の方が、労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすいため、資産金額で見たときに上位10%、1%といった位置にいる人のほうがより裕福になりやすく、結果として格差は拡大しやすい。 また、この式から、次のように相続についても分析できる。すなわち、蓄積された資産は、子に相続され、労働者には分配されない。たとえば、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのベル・エポックの時代は、華やかな時代といわれているが、この時代は資産の9割が相続によるものだった。また、格差は非常に大きく、フランスでは上位1%が6割の資産を所有していた[7][8]。 一方で、1930年から1975年のあいだは、いくつかのかなり特殊な環境によって、格差拡大へと向かう流れが引き戻された。特殊な環境とは、つまり2度の世界大戦や世界恐慌のことである。そして、こうした出来事によって、特に上流階級が持っていた富が、失われたのである[9]。 また、戦費を調達するために、相続税や累進の所得税が導入され、富裕層への課税が強化された[10][11]。さらに、第二次世界大戦後に起こった高度成長の時代も、高い経済成長率(g)によって、相続などによる財産の重要性を減らすことになった[9][12]。 しかし、1970年代後半からは、富裕層や大企業に対する減税などの政策によって、格差が再び拡大に向かうようになった[13][14]。そしてデータから、現代の欧米は「第二のベル・エポック」に突入し、中産階級は消滅へと向かっていると判断できる[15]。つまり、今日の世界は、経済の大部分を相続による富が握っている「世襲制資本主義」に回帰しており、これらの力は増大して、寡頭制を生みだす[16]。 また、今後は経済成長率が低い世界が予測されるので、資本収益率(r)は引き続き経済成長率(g)を上回る。そのため、何も対策を打たなければ、富の不均衡は維持されることになる[17]。科学技術が急速に発達することによって、経済成長率が20世紀のレベルに戻るという考えは受け入れがたい。我々は「技術の気まぐれ」に身をゆだねるべきではない[9]。 不均衡を和らげるには、最高税率年2%の累進的な財産税を導入し、最高80%の累進所得税と組み合わせればよい[9]。その際、富裕層が資産をタックス・ヘイヴンのような場所に移動することを防ぐため、この税に関しての国際的な協定を結ぶ必要がある。しかし、このようなグローバルな課税は、夢想的なアイディアであり、実現は難しい[15]。
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