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昨日の一般質問で、「中学校の学校選択制度」について、その課題をあげつつ、質問しました。
答弁の中で、市長、教育長ともに、課題を整理し、検討を進めることを確約していただきました。
実は、この問題は深刻だ。 「学校を自由に選べる」という制度を打ち出したのが、2003年、
当時の沢田市長がトップダウンで、教育委員会に投げてはじまった政策。あの当時から、様々な課題が予想され、その歯止めをかけるために、ブロック制にして、試行も中央地区と隣接の地区で始まった。
当初から、問題が起こった。当時、単学級になっていた桜台中で、「統合」のうわさが流れると、この制度を使って、翌年の新入生が、10人足らずとなった。20人近くが、隣接の坂本中を選択した。その結果、現実が先行する形で、「統合」へのレールは一気に敷かれた。
学校の「荒れ」や部活動の顧問の人気などでも学校を選択する風潮が起こる。 また、交通の便の良い学校は人気が集中する、久里浜中学校は、毎年のように抽選となる。10校を越える広範囲の学校から子どもが通ようことになると、防災の観点でも、遠距離の子どもへの対応が深刻となっている。たとえ、訓練でも、自宅に歩いて帰るのは困難だ。とりわけ、交通網が遮断された時に課題は大きい。
逆に生徒が集まらない学校は、課題を一気に引き受ける。生徒数の減少は、学級数の減少、ひいては、教職員の定数法に従い、教員の減となる。 その結果、専門教科の教師がそろわなかったり、部活が廃部になれば、必然として、教育環境の悪化、さらには、希望者の減という悪循環を生み出す。
これは、子ども達に原因がある訳でも、教師に原因がある訳でもない。制度が、悪循環を生み出している。
全国で学校選択制を導入している自治体は、全体の10%程度だ。神奈川県内でも、厚木市と逗子市と横須賀市だけ。横浜市は、「小中一貫」、「小中連携」を進める観点から、この制度の導入を見送ってきた経過もある。
逗子市においては、当初、小・中ともに行ってきたが、小学校の学校選択制度は、駅前の小学校に希望が偏りすぎるなどの観点から課題が大きいとして、現在制度を行っていない。
東京都杉並区でも学校選択制度を廃止。原因は地域と学校の関係の乖離が起こり、PTAと地域・教員で協議会をつくり、検討した結果、廃止を決定した。
横須賀市の現状を見ると、保護者のアンケートを見れば、「この制度があった方がいいか」と問えば、要望は強い。一見、制度として落ち着いているように見える。しかし、この制度のマイナスの影響は、あちこちに出てきている。まずは、地域と保護者の意識の乖離である。
横須賀市西海岸の長坂地区では、本来は大楠中学区であるが、指定学区の変更届を50%を越える児童が、隣接する武山中学校に選択する事態がおこっている。保護者・児童の選択は、学校規模の大きい学校、部活の多い選択肢の多い学校に流れる。
また、逸見地域では、通学の便の関係で、指定校の坂本中よりも、電車をつかって、田浦中を希望する児童が増加しているし、市内の各地で、選択制度の課題が表面化している。
近年、顕在化してきた問題に「学校選択制が与える、保護者の共同体への意識の変質」がある。
子育て世代の保護者と地域の意識の乖離には、必然的な構造がある。とりわけ、他地区から新規に地域に転入してきた世代は、「子どもを通じて、地域と保護者の繋がり」が出来る。地域外の学校に行けば、子どもの通学する学校や、しいてはその地域との繋がりがより強くなり、居住地域の共同体への参加意識は弱くなる。
他地区に子どもを通わせていて、居住地域の活動に積極的に参加する人は極めて稀である。所属する学校の地域の活動への参加が中心となる。さらに、 第一子が通学する学校に・二子・三子も選択することになる。
この制度が始まって10年、地域と家庭の繋がりは、シロアリが柱を食い尽くすように、少しづつ広がって、気がついた時には、地域を支える子ども達も保護者も喪失していることに気づく。ひいては、共同体の崩壊をも生み出している。
もし仮にこの制度と、学力テストの学校別の結果の公表が繋がれば、学校間はランクづけされ、学校間の格差と差別意識は一層強くなることも、懸念される。 学校選択制をもう一度見直す時期に来ている。
横須賀市教委:「学校選択制」見直しへ 地域、学校の連携に問題 /神奈川
毎日新聞 2013年11月27日
横須賀市教委は26日開会した市議会定例会の本会議で、学区を越えて進学する中学校を選べる現行の「学校選択制」について、見直しを検討する方針を明らかにした。教育の規制改革で導入したものの、地域と学校、家庭の連携が希薄になり、学校間格差を助長するなどの問題が生じているためという。
学校選択制は2003年4月から全国で導入が進み、同市も03年度に一部で実施。05年度から全市に拡大し、市内を6ブロックに分け、子どもと保護者が居住するブロック内の全校と隣接する学区の中学校から進学先を選べる方式を採用した。
この日の一般質問で長谷川昇議員が「通学の便が良く部活動が盛んな学校に希望が集中している。選ばれない学校は生徒、クラス、教員数がさらに減少し悪循環に陥っている」と問題点を指摘した。
吉田雄人市長は「地域と学校の連携の機会を少なからず減少させてきた。子どもの特性を伸ばすとの評価もあり、拙速にならないよう見直しを検討してもらいたい」と述べた。永妻和子教育長は「子どもたちや保護者のニーズを捉えながら、どういう方法が一番いいか検討しなければいけない時期」と答えた。
県教委によると、逗子市が市内全3校から選べる自由選択制、厚木市が学区の指定校と隣接の学校から選べる近隣選択制を導入している。【田中義宏】
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