国家安全保障と情報に関する国際原則・「ツワネ原則」を知っていますか。

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□「ツワネ原則」を知っていますか。
□「特定秘密保護法案」を一日じっくりこもって新聞や資料をあさりながら研究した。このところ外に出ることが多かったので、こういう日が必要だ。様々な角度から考えたが、この法案は廃止をすべき内容である。まずは、「なぜ今、早急につくらねばならないのか。」ということである。「テロ対策やアメリカからの情報提供などの必要から」というのが理由らしいが、国民全体の基本的人権を制限してまで、成立すべきものとは、到底思えない。私たちは、この問題が、単に税金をおさめる方法とか、税金の使い道に関するようなものでなく、個人の尊厳につながる、基本的な人権・とりわけ「自由権」という最も尊重すべき権利の制約に繋がる事項である。
 マスメディアにとって、「取材活動の自由」は、報道の命綱である。「知る権利」を制限するものであるから、基本的に反対の立場である。今後野党との間で、第三者機関をつくろうが、さまざまな修正を加えようが、まずこの法案が必要かどうかという論議から始める必要がある。
 
□とにもかくにも、一番の問題が、制約を受ける当事者の国民の多くがこの問題に関心を持っていないし、国民的論議がされていないことだ。この問題を調べるにつれて、「特定秘密保護法案」が、単に軍事機密のみならず、様々な市民の思想・信条、とりわけ表現の自由に影響を与えるということだ。
 
□情報漏洩に関しての国家的な危機があるというならば、基本的人権に関わることだけに、国民の論議がそれこそ必要なことなのである。
□下に紹介するのは、二つの新聞社が社説で、法案に反対の立場から書かれている。その中で、「ツワネ原則」という耳慣れない原則が示されている。今年の6月に公表された「国家の安全保障と情報に関する国際原則」だという。今回の「特定秘密保護法案」をこの原則に照らすと、著しく適合していない。国際的な基準に満たないとするならば、それは根本から改めなければならない。必要かどうかの論議もふまえた中で、再度仕切り直しが必要だ。
ツワネ原則手本に 欠陥だらけ秘密法案白紙を(東京新聞「こちら特報部」11月9日)
 

安倍政権はアメリカをまねて特定秘密保護法案を押し通そうとしているが、モデルにするべきは「ツワネ原則」という声が識者から上がっている。政府が秘密を指定するとしても、知る権利や人権に配慮が必要という原則だ。七十カ国の識者五百人以上が、二年も議論してまとめた。比べてみると、あらためて法案の問題点が浮かび上がった。 (荒井六貴、榊原崇仁)
 「知る権利、人権に配慮したツワネ原則に照らすと、秘密保護法案は重大な欠陥や違反だらけだ。こんな法を成立させてはいけない。白紙に戻すべきだ」
 日本弁護士連合会秘密保全法制対策本部の副本部長を務める海渡雄一弁護士は、聞き慣れない「ツワネ原則」を用いて厳しく批判した。
■一体、どんな原則なのか。
 正式には「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」と呼ぶ。安全保障の秘密を設けるに当たり、国家が考慮しなければならない指針として、今年六月に発表された。国連や欧州安全保障協力機構などの国際機関の職員、安全保障に関する専門家ら五百人以上が二年間、南アフリカのツワネで議論してまとめた。参加者の国籍は七十カ国にも及ぶ。
 議論は米国の投資家ジョージ・ソロス氏が設立した「オープンソサイエティー財団」が支援した。同財団のホームページによると、安全保障上の理由で国家がさまざまな情報を秘密に指定し、国民の知る権利とのバランスが崩れていることを危惧したことが、原則をまとめる出発点になった。内部告発サイト「ウィキリークス」が、米国政府による人権侵害の情報隠しを公表したことも影響したという。
 ツワネ原則は「国際人権規約や欧州人権裁判所の判例、人権保護の国際的な合意に基づいている」(海渡氏)。五十の原則があり、財団はその中でも十五項目が重要と示す。
 原則は(1)国民は政府の情報を知る権利があることが基本中の基本と説く。秘密を優先する条文ばかりが目につく法案とは正反対の考え方だ。
(3)政府は防衛計画など限定した情報は非公開にできるが、(4)人権や人道主義に違反する場合は公開しなければならないと、秘密指定の幅に歯止めをかける。一方の法案には、人権や人道主義に対する配慮は、かけらも見られない。
 原則はほかにも、(5)国民は政府による監視システムについて知る権利がある、(13)独立した監視機関を置く、と レペタ氏は、かつて日本の法廷の傍聴席でメモを取ることが禁じられたことについて国家賠償請求訴訟を起こした。最高裁は一九八九年、賠償は退けたが、傍聴席で自由にメモを取ることを認めた。
 「秘密保護の悩みは各国共通だから、世界の多くの専門家から意見を聞いてツワネ原則ができた。本来なら、政府が翻訳して国民に周知しなければならない」
 しかし、政府関係者の関心は薄い。法案をとりまとめた内閣情報調査室の担当者は、こちら特報部の取材に対し、ツワネ原則について「私はよく存じ上げない」と語り、法案作成に当たり参考にしたかは「詳しく調べないと分からない」と言葉を濁した。
 自民党の議員も知らないようだ。八日の衆院国家安全保障特別委で、町村信孝元外相は「知る権利が国家や国民の安全に優先するという考えは間違い」と言い切った。
 国会で、ツワネ原則を絡めた議論はとても期待できない。それどころか、国会の審議が長引けば国民の反発が強まる恐れがあるからか、安倍政権の行動は短期決戦で一気に決着を図ろうとしているようにも映る。法案が、国会が特に重要と位置付ける「重要広範議案」に指定されているのにもかかわらずだ。
 制度は与野党合意によって九九年秋の臨時国会から始まった。重要広範議案への指定は野党が要求し、首相が本会議で趣旨説明や質疑をする。首相は委員会での各党の質疑の場にも同席する。通常国会で四件程度、臨時国会で二件程度が指定されることが多い。
 「重要」の名にたがわず、長期間、慎重に審議するケースが多い。二〇〇五年の郵政民営化法案や昨年の社会保障と税の一体改革関連法案は衆院の委員会の審議時間がそれぞれ百九時間、百二十九時間に及んだ。
 今回、慎重さはうかがえず、ごくごく短い審議になる可能性も否定できない。安倍政権が特定秘密保護法案とセットと考える日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設法案では、衆院の委員会審議は二十一時間にすぎなかった。
 ツワネ原則を持ち出すまでもなく、知る権利を重視すれば、審議は激しい議論になるはずなのだが…。
 早稲田大の今関源成教授(憲法学)は「国家が進む道は国民自身が決めるものだ。うまく方向付けるには国民が世の中の情報を知ることが大前提となる。安全保障に関わる情報も、国民の命運を左右する性質を持つ以上、隠して良いわけがない」と訴える。
 一橋大の阪口正二郎教授(憲法学)は、ツワネ原則を「民主国家にとって当たり前の内容だ」と前置きした上で、こう警告した。
 「国民を見下すような国会議員ばかりだから、当たり前の内容すら目を向けない。情報隠しを前提とした法律をつくってはいけない。こんな状態が続けば日本は『普通の国』にもなれなくなってしまう」
<デスクメモ> 中学生の時、制服を着る義務があった。疑問に思うと、クラス担任は「生徒会規約の決まり」と言った。「誰がいつ決めたのか」と問うと、「決まりは決まり」。大人の押し付けだから、規約改定の条文がなかった。子どもたちが大人になり、「特定秘密保護法なんて、誰が決めた」と恨まれたくない。(文)

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秘密保護、ツワネ原則に学べ 安全保障と知る権利の調整指針 法案見直し求める動きも

2013年11月7日 朝日新聞 
 

公務員らの秘密漏洩(ろうえい)を厳罰化する特定秘密保護法案。日本政府が法案を国会に出すことを検討していた今夏、アフリカであった国際会議で、各国政府が秘密保護と「知る権利」との調整を図るための指針がとりまとめられた。国会審議入りを前に、この指針をもとに法案の見直しを求める動きが出てきた。
 「『ツワネ原則』に基づけば、秘密保護法案は白紙に戻されるべきだ」。6日午後、東京・永田町の衆院第一議員会館。超党派の国会議員や市民が集まった勉強会で、海渡雄一弁護士が強調した。
 ツワネ原則――。今年6月、南アフリカ共和国のツワネで公表された一つの指針だ。国家秘密を守るための法律を作る場合、安全保障面にのみとらわれるのではなく、知る権利や人権との整合性をどう確保するか。70カ国に及ぶ人権や安全保障などの専門家、国連関係者が2年間にわたり議論し、立法の際のガイドラインとしてまとめた。
 ツワネ原則は、防衛計画や兵器開発、諜報(ちょうほう)に関する作戦などにおいて政府は情報を制限できるとする一方で、人権や人道に関わる国際法に違反する情報の制限は許されないと定める。具体的には、(1)すべての情報にアクセスできる独立した監視機関の設置(2)秘密指定の最長期間を法律で定め、解除を請求するための明確な手続きを作る(3)公益性の高い内部告発者を守り、公務員でない者は秘密情報などの入手で罪に問われない、などを定める。
 この原則からみると、特定秘密保護法案にはどんな問題点があるのか。
 海渡弁護士は、▽情報アクセス権を持つ第三者機関の設置規定がない▽秘密指定の延長を無制限にできる▽裁判の中で秘密の内容を取り扱える規定がない――などの点を指摘。「法案には、知る権利や人権問題とバランスをはかろうという発想がない。ツワネ原則の考え方をもとに見直すべきだ」と主張した。(清水大輔)
 ■ツワネ原則の主な項目
・安全保障に関するすべての情報にアクセスできる独立した監視機関を設置。
・政府は防衛計画、兵器開発、諜報に関する情報へのアクセスを合法的に制限できる。
・政府は人権、人道に関わる国際法に違反する情報の公開を制限してはならない。
・政府は秘密指定の最長期間を法律で定める。
・秘密解除を請求する手続きを明確に定める。
・内部告発者は明かされた情報による公益が秘密保持による公益を上回る場合、報復を受けてはならない。

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